ヲトメ心と 秋嵐?
         〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。
 
 



この夏は、とうとう気象庁も
“異常気象だった”というお墨付き(?)を出したほどの乱脈ぶりで。
途轍もない酷暑はもとより、雨がなかなか降らない渇水地域もあれば、
降れば降ったで、冠水するほどの大雨が延々と降り続けたり、
強風や突風が襲い掛かって物を飛ばしての被害が広がったりと。
これでもかという大暴れっぷりは、
夏休みとあってお家に居続けとなった、
小学生の腕白たちの出足をも、
多少は鈍らせたほどの凄まじさだったそうで。




 「新学期が始まれば、大雨と炎暑ですものね。」

盆が過ぎてからの週末辺り、
まとまった雨が降ったおりには、
蒸し暑さも浚ってくれたため、
多少は涼しくなったかに思えたけれど。
実際の話、
それも3日と保たずに悪夢のような酷暑がすぐにも復活し。

 「西のほうはそうでもないそうだけれど。」
 「でもそれって、大雨がまた降ったからでしょう?」

それに、
向こうでは七月の頭からずっとっていう連続で暑かったそうだから、
早々と涼しくなるのも、ある意味 道理なのかもと。
夏休みに催された工学関係の大会で、
関西方面にも仲良しが増えた、ひなげし様こと平八が、
下敷きをウチワ代わりにお顔を扇ぎつつ、そんなお話を振れば、

 「被害が出るほどの大雨とか風は確かに困りものよねぇ。」

長く住んでらした人が、
“こんななったのは初めて”と仰有ってるのをよく見るけど、
乱暴な開発とかが原因だったら目も当てられないしと。
日本画壇を背負ってらっしゃる父上からの、それも感化か、
森とか山とか削り過ぎなんだからと
細い眉を寄せるのが、白百合様こと七郎次。
彼女らの見解ももっともなほど、
この夏は そりゃあもうもう、
まずはそれを重大ニュースに挙げねばというほど、
自然の猛威が大暴れした数カ月でもあり。
これまでも毎年のこととして、
地震か台風が大きな災害を起こすことはあったが、
一つ季節にこうまであれこれ頻発したのは、
例がないのではなかろうか。

 「猛暑の年は冬も雪や寒波が凄いんじゃなかったっけ。」
 「あ、そういえば。」

窓辺近くの席についたまま、
細いあごへ指先そろえた手を添えたり、
やんわりと目元細めて微笑う姿は、
白基調のセーラー服も淑やかに、
それは嫋やかな印象しか振り撒かぬものだから。
さすが三華のお姉様がたと、
その麗しさに憧れの視線が集まっているものの、

 「………あ。」
 「きゃあっ。」

突然、教室じゅうが真っ白に染まり、
それが引かぬうちという素早さで、
ぱしん・ぱりぱりぱり…という乾いた雷鳴が轟いたものだから。
お廊下側へ自然と避難なさってた大半のお嬢様がたが、
揃ってその身を竦ませてしまわれる。

 そう、女学園のある丘の町も、
 今日は朝から結構な風雨に襲われておいでで。

緑がかった鈍色の空は、まだ結構明るいほうだが、
それでも 結構早い時間帯から、
遠く近くと雷の音は絶えなかったし。
昼を回らずして降り出した雨は、
これがまた なかなかに威勢のいいそれで。
窓や外壁を叩く音が凄まじく、先生の声さえ遮られるほどだったため、
何度も音読を中断させられては、
これでは授業にならないわねぇと、
肩をすくめてしまわれたシスターもいらしたほど。
何しろ育ちのいいお嬢様だらけな女学園ゆえに、
窓の外がピカリと光ればそれだけで、
校舎のあちこちから可愛らしい悲鳴が複数上がるし。
それを笑うお人も まずいない。

 『ああ、お可哀想に。』
 『どなたにも苦手はありますわ。』
 『こんなに激しい雷ですもの、私だって恐ろしいです。』

そして、見るからに女傑ぽいお姉様がたならともかくも、
こちらの三華様がたのように、
嫋やかだったり麗しかったりする 気性・風貌のお姉様が
教室の横面全部の窓を白く叩いたほどの稲光へも
至って平然としておいでだと、

 「なんて凛々しいお姉様でしょうvv」
 「ひなげし様も…怖くないのでしょうか。」

あんなに愛らしいお姉様なのに凄い凄いと、
頬を染めて感嘆しておいでなお嬢様たちへは、

 “……。”

一体何が基準なのだろかと、
そっちへ凄いと目を見張ってしまった、紅ばら様こと久蔵。
集めたプリントを教科担当へ提出して来たお務めから、
帰還したところであり。
彼女もまた、そこが自分の席だからというのもあってのこと、
当たり前に窓辺へすたすたと足を運ぶものだから、

 「あ、紅ばら様…。」
 「さすが、二年で一番“ハンサム”でいらっしゃるvv」

金髪という淡色の髪、肩先で軽やかに揺らして。
背条も伸ばした、それは颯爽とした歩みで窓辺へ近づく彼女であり。
到着するすんでのところで、
またもや遠い雷鳴が、ごろろごろろと唸ったけれど。
他の皆様、ひっと身をすくめるのにも気づかぬまま、
ただいま〜と、にこやかにお愛想を振ったのみ。
(但し、これが判るのは白百合様だけですが…。)

 「お帰りなさいvv」
 「教員室はいかがでしたか?
  授業はここまでというお声は?」

もうヘイさんたらと、七郎次がころころ品よく笑い、
久蔵がそれを見て眸を細める…ところまでは いつもの事だが。

 「…あのな?」

ふと…席に着いたそのまま
白いお手々を机の上で組み合わせた紅ばら様が、
微妙に伺うような小さなお声を出したので、

 「??」
 「どうされました?」

言いにくいことですか?
だったらシチさんだけに“お言いなさい”と、
そこは平八ももはや心得たもの。
実際の言の葉に乗せずとも、
視線の揺らぎだけで意が通じる離れ業、
これまでに何度見て来たことか。
とはいえ、

 「…………………。////」

 「あれ?」
 「おや?」

組み合わせた指をむにむにと揉み合わせる含羞みようは、
この、緊急停止装置なしの弾丸剣豪娘には、
ちょっと見ない態度じゃあなかろうか。

 「本当にどうしましたか?」
 「ひょっとして具合がお悪いのなら、保健室へ…。」

平八がそうと言った途端、
ふるるっと細い肩を震わせた久蔵で。



 「…………正直におっしゃい、久蔵殿。
  兵庫さんと一体 何がありました。」

 「こらこらお母様。
  昭和のお父様みたいなこと訊かない。」




     ◇◇◇


唐突に真っ赤になるわ、
七郎次にも読めない格好の無口が発揮されるわ、
成程 この反応では、鬼百合のお母様が、
鬼瓦も叩き割れそな“お父様”仕様になってもしょうがないかもで。(笑)

 とはいえ

 「…俺にもよく(判らぬ)。///」

先程、教員室まで行った折、
お廊下でシスターと何か話している榊せんせえを見かけたそうで。
その時は、何ということもなくの
“あ、今日は校医の日か”と思った程度だったのに。

 「戻ったら雷がした。」
 「うん。」
 「そしたら…。/////」
 「頑張れ、久蔵殿。」

あまりの不安定なお天気ではあれ、
雷も落ちてはなし、雨脚もたまに強くなる程度ということで、
授業への変更事項はないそうで。
ちょっと残念だが、ままそれはそれ。
それより面白そうな話かも知れぬと、(こらこら)
昼休みは無人なことの多い美術室へお邪魔して、(某幽霊部員調べ)
お弁当を広げつつ、
不審な様子の久蔵殿への
カウンセリングを構えた七郎次と平八だったが、

 「あのな?」

蓋は開けたが箸さえ持たぬままの久蔵殿。
だが、含羞みというより、
自分でも何かが不思議でしょうがない様子であるようで。
かっくりこと小首を傾げると、

 「先週末にも、」
 「ええ、大雨が降りましたよね?」

 「兵庫が、」
 「あ、そうですね。
  宿題やってるかって、いらしてたんですよね。」

 「そいで、あのな………………。//////」
 「…………?」

何かこういう状態になると、
強制終了してやり直しと構えたくなりますがと感じたのは、
PC小僧、もとえ、PC小町の平八だったが。
七郎次はというと、ちょいとアプローチが異なるようで。

 「雷が気になったような言い回しをなさいましたよね、久蔵殿。」
 「…っ。」
 「日頃は平気なのに、ということは。
  雷と兵庫さんとに関係あるんですよね?」
 「〜〜〜。///////」

途端に ふににと細い肩すくめ、
白皙の頬が仄かに染まったところからして。

 「ふっ、謎は解けましたわ、皆様。」
 「……っ。」
 「シチさん、おさすがvv」

ご褒美に、ゴロさん特製の牛肉切りおとしの佃煮をと、
おすそ分けをしてくれた平八へ、あらありがととお礼を言ってから、

 「兵庫さんの前では、
  雷怖いって飛び上がったんじゃないですか?」

 「〜〜〜〜〜〜っっ!/////////」

じっちゃんの名にかけて、
真実は一つだから、
まるっと見破ってしまったぜ観念しなと。

 「何かいろいろ混ざってますが。」
 「いいの、いいのvv」

どひゃあと、
白い頬を両手で包み込んでのけ反った久蔵という、
珍しいものが見れたんだから、
善しとしてよという七郎次の心境も、まま判らぬではない。

 「そっかぁ。
  久蔵殿にも女子高生らしいスキルがようやく芽生えたか。」

好きなお人の前だと、
声が細くなったりご飯の“一口”が少しになったり、
そうそう、平気だったホラー映画での怖がり方がお淑やかになったり。
そういうのって、決して“ぶり子”ばかりじゃないんです、ええ。

 “アタシも、あの黒いのが倍くらい怖く感じますしvv”

……なんでそんな
ロマンのないもの持ち出しますかね、白百合様。(苦笑)

 それはともかく。

これで勘兵衛様への執着も多少は薄まるといいなと思ったか、
それとも、
やっと年頃の娘を持ったと実感出来てお母さんは嬉しいと思ったか、
それとも…お父さんは微妙に寂しいぞと思ったか。

 「いやいや、最後のはないから。」
 「え?」
 「……?」

こらこら、久蔵殿までそれはないでしょと。
お喋りの弾むお嬢様たちだが、
うんうん、秋はこれからですしね。
しっとりロマンチックな出来事がたくさんありますように。
頑張って女子力上げてね、
大暴れしない方向で………は無理かなぁ?(う〜ん)




     〜なしくずし・どっとはらい〜  13.09.04.


  *昨日今日は、K市でも豪雨と雷でにぎやかでした。
   気温もぐっと下がって、半袖では涼しすぎるくらい。
   関東の皆さんの七月はこんなんだったんでしょうね。
   このまま過ごしやすさが続く…とはいかないそうですが。
   その間にと思って、久蔵さんと兵庫さんのかわいいお話を一席vv

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